Vol. 05

鉄幹 無濾過(オガタマ酒造)

「とてもシビアで繊細。だからこそ、想いが乗る焼酎なんです」

「オガタマ酒造」ーー。一度目にしたら忘れないほどインパクトのある、少し変わった蔵の名前です。実はすべてカタカナで表現される名前の蔵は、県内でも唯一なんだそう。その名の由来は、蔵に程近い鹿児島県薩摩川内市永利町にある石神神社の境内にそびえる、国指定天然記念物、樹齢八百年の神木「オガタマの木」。

そんなオガタマ酒造の蔵としてのモットーは「温故知新」。しかし、「蔵が設立されてからまだ比較的年数が浅い」という事前の情報や、そのちょっと前衛的な名前から、蔵に伺う前は正直「古さは、どこにあるんだろう?」と疑問に思っていました。

けれど、実際に蔵に足を運んでお話を聞いてみると、その考えは一変しました。そこには、先人が伝承してきた蔵の教えや昔ながらの仕込みの手法を今に残し、新たな焼酎を造り続ける蔵の姿がありました。今回は、そんなオガタマ酒造の焼酎造りについて、杜氏の草道和樹さんにお話を聞きました。

お話をうかがった、オガタマ酒造の杜氏の草道和樹(くさみち かずき)さん

いまでも「甕仕込み」にこだわるのはスキルを属人化させないため

オガタマ酒造はその名前がフィーチャーされることが多いかと思いますが、どんな特徴がある蔵なんですか?

草道

実は、オガタマ酒造は「寿(ことぶき)酒造」という蔵から権利を譲受してできた蔵なんです。蔵の歴史は古く、創業時から数えると再来年で125周年を迎えます

今も、25年前のオガタマ酒造の設立メンバーで現役の方も何人かいます。そのメンバーが、昔ながらの焼酎造りを継承し、改めて蔵を立ち上げ、いまに引き継いできました。

そうだったんですね。さっき貯蔵庫付近を通ったんですが、奥の方までずらりと甕が並んでいるように見えました。甕を使った仕込みは、それまでの造りを受け継いだものなのでしょうか?

草道

甕仕込みは、25年前のオガタマ酒造の設立時に現会長が導入しました。大規模な機械仕込みは、安定的に均質な焼酎を大量に生産できるというメリットがあるのですが、その半面、「蒸留担当」「二次仕込み担当」「麹担当」…と各工程の作業分担が縦割りになり、焼酎造りに関する汎用的な知識・スキルが身につきにくいというデメリットがあると考えています。

一方、甕仕込みは、機械仕込みのように大量の焼酎を安定的に生産するのは難しくなりますが、逆に、焼酎造りにおけるすべての工程を把握している必要があるので、結果的に焼酎造りにおける様々な基本的スキル・知識が体感レベルで身につきやすいというメリットがあります。

「安定してたくさん造れる」からといって機械による仕込みがいつも最適、というわけではないんですね。

草道

大きな設備で仕込むと効率はいいのですが、自分が担当した狭い領域のことしか分からない人材ばかりになってしまうおそれもあります。極端な話、その担当者がひとり抜けると、簡単にカバーできず、大変なことになります。

レンガづくりの蔵「鉄幹蔵」内部のようす。昭和期から使われている手作りの甕が並んでいる。

なので現会長は、蔵の立ち上げ時にそのことを案じて、若い人に焼酎造り全体を伝承したいという意図で甕仕込みをはじめたんです。

仕込みの違いによってそこまで変わってくるんですね。

草道

そうですね。この製法だと、みんなで仕込みに関する情報を共有できるようになり、知識・スキルの両面で蔵全体として底上げができるので、なにか問題が発生した場合でも原因が特定しやすい。

例えば、甕仕込みに慣れてくると、その日のなかで、いつどんな工程に着手すべきかということがわかるようになるので、「この時間に○○担当者がここに居ないということは、なにか問題があったな?」と、問題発生時に気づくことができ、大きなミスを未然に防ぐこともできるようになります。小さく仕込みをするのはそこがメリットなんですね。

毎年、まったく新しい味になる「鉄幹 無濾過」

今回お届けする「鉄幹 無濾過」ってどんな焼酎か教えてもらえますか?

草道

この焼酎は、設立時からずっと造ってきた「鉄幹」という銘柄を、「無濾過」という製法で仕込んだタイプの焼酎です。

普通の「鉄幹」の場合はいくつかの甕で仕込んだ焼酎をブレンドして、同じ味になるように調整するのですが、「鉄幹 無濾過」の場合はその造り方の性質上、ブレンドによる調整はしないので、毎年味の違う焼酎になります。

なので、造り手の技量や原材料の質が焼酎の味にダイレクトに伝わるので、杜氏としてはプレッシャーのかかる銘柄です。

なるほど…、かなりシビアな環境で造られる焼酎なんですね。

草道

はい、仕込みだけでなく管理もすごく大変で。焼酎を仕込む際に原料に由来する油が出てくるのですが、浮いてきた油を掬う作業は機械化できないため手作業で、かつ管理するのもアナログなので、いちばん神経を使いますね。

油を取りすぎると淡白な味になりますし、残しすぎても雑味になってしまいます。まるで、ラーメンの豚骨スープのアク取りのような、繊細で重要な工程なんです。

そのちょうどいい塩梅を見つけるのはすごく難しい。そうした繊細な工程をいくつも経て「無濾過」の焼酎は出来上がるんです。今年の「鉄幹 無濾過」も、自信の持てる仕上がりになりました。やはりこの寒い時期、ぜひお湯割りで飲んでもらいたいですね。

蔵の情報

【会社名】 オガタマ酒造株式会社
【住所】 〒895-0005 鹿児島県薩摩川内市永利町2088
【設立】 1993年
【主要銘柄】 本格焼酎「鉄幹」「泣こよかひっ飛べ」「蛮酒の杯」など
【Webサイト】 http://www.ogatama.co.jp/

 

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