Vol. 03

紫尾の露 紫月(軸屋酒造)

「毎晩、自分の蔵の焼酎を飲みます。もう、『血液』みたいなものなので。」

今回は、鹿児島県薩摩郡さつま町にある軸屋酒造から「紫尾の露(しびのつゆ) 新酒」という時期限定の芋焼酎をお届けします。

その年の秋に収穫されたさつまいもで仕込んで造られる「新酒」ならではの裏話や、新酒のおすすめの飲み方について、代表の軸屋麻衣子さんに伺いました。

その年の原料の特徴をダイレクトに感じられる「新酒」

まず、今回お届けする「紫尾の露 新酒」について教えていただけますか?

軸屋

この焼酎は、今年のお盆過ぎから製造をはじめ、最初に仕上がった新酒です。

古酒(長期間貯蔵している焼酎)をブレンドしていない100%の新酒で、その年に採れた芋のフレッシュさ、力強さを感じられる味になります。

新酒の味は、毎年採れる芋の質によって大きく左右されます。ですので、その年の味はその年にしか味わえない、というのが新酒の大きな特徴のひとつです。

(※中には、調整のために古酒と新酒をブレンドして出荷される銘柄もある。)

新酒は他の多くの蔵でも出荷されていますが、軸屋酒造でも毎年ずっと出しているのですか?

軸屋

新酒自体は毎年出していましたが、古酒とブレンドしない100%の新酒を出し始めたのは3年前からです。

それ以前は、当時社長だったうちの父が、新酒独特のツンと来る味が苦手で、100%の新酒は造っていなかったんです。

けれど、私は蔵として新しい価値観も必要だと思っていたので、製造法の違う新酒造りにもチャレンジしようと提案し、古酒とブレンドしない新酒を造ることになりました。

なるほど、軸屋酒造にとって100%の新酒づくりというのはチャレンジングな出来事だったんですね。

軸屋

はい、まずは1回きり、という条件で造りはじめたので、最初の1年は消費者の方々に受け入れられるかどうか、すごく怖かったです。

ただ、新酒といっても出来上がったばかりの新しい焼酎をそのまま瓶詰めして出荷する、というわけではありません。

時間を置いて寝かせたり、逆に手を加えて味を調整したりして、ちゃんと焼酎としてクオリティーの高い商品に仕上げてから出荷しています。

また、材料は同じ黄金千貫(焼酎づくりによく用いられる芋の品種)でも、それぞれ年によって性質は変わりますし、仕込みの開始時期も毎年少しずつ変えています。

毎年質の違う原料で、いかにベストな状態に仕上げるということが、新酒づくりでは求められるんです。

原料のさつまいもを切って細かくする作業の様子。焼酎の出来を左右する、とても重要な工程。

蔵として、毎年ひとつは「挑戦」を重ねる

この新酒の他にもチャレンジングな造り方をした焼酎ってあるんですか?

軸屋

はい、たとえば『麗しBlack』という焼酎ですね。私が大学卒業後の留学先・ニューヨークから帰国し、焼酎の製造に携わるようになった頃、うちの蔵では「黒麹」を使った焼酎がありませんでした。

父が黒麹仕込みの焼酎が嫌いで、ずっと造ってなかったんです。

けれど、その当時は本格焼酎ブームの真っ只中。特に黒麹仕込みの焼酎の人気に火がつきはじめた頃です。

そんな状況だったので「このままではいけない」と思い、自分がはじめて造る焼酎は、黒麹仕込みのものに仕上げました。それが『麗しBlack』という焼酎です。

1本目から蔵として初めての焼酎をつくるって、なかなか勇気が要ることだと思います。

軸屋

そうですね、当然分からないことだらけですし、不安はすごくありました。蔵としてはじめて黒麹を使ったので、それを見た時は「こんな真っ黒なのか…!」と衝撃を受けました(笑)。

新酒づくりにも共通することですが、うちの蔵では毎年ひとつは必ず新しいことにチャレンジするようにしているんです。

それは製法や材料を変えてみたり、違う種類のアルコールを造ってみたり。そういうチャレンジ精神には溢れていると思います。

最初は「生」、そのあとは「燗つけ」で楽しむ

この焼酎は、どんな風に飲んでもらいたいですか?

軸屋

そうですね、いろいろ美味しい飲み方はあるのですが、私は「燗つけ」をおすすめしています。

お湯割りにすると、焼酎の香り・味がグッと立ちます。それはそれでよいのですが、新酒をより美味しく味わうには、燗つけくらいが程よくちょうどいいんじゃないかなと思います。

あとは、逆に生(き)で飲むとか。新酒そのものの味がダイレクトに伝わるので、最初の一口は生で飲んで、あとから燗つけでもいいですね。

なるほど、二段階で楽しめるというわけですね!

軸屋

そうです。もちろん、これからの時期はお湯割りも美味しいですけどね。私自身、お湯割りがとっても好きなんです。

あの、すーっと焼酎が体に浸透する感覚。

それがたまらなく好きで、お湯割りで飲むとペースがすごく早くなります。晩酌で一度お湯割りにすると、もう戻れなくなってしまいます(笑)。

「もろみ」をタンクで寝かせる工程。ここでは、徹底した温度管理が行われる。

造り手にとって、焼酎はもはや「血液」

軸屋さんご自身は普段晩酌はされるんですか?

軸屋

はい、しますね。私にとって焼酎はもはや「血液」みたいなものなので、1日も欠かさないくらい、ほぼ毎日家族で晩酌します。

いま小学四年生の子どもがいるんですけど、その子がはじめて喋った言葉が「乾杯」でした(笑)。それだけ毎晩、乾杯してるんだなぁと。

もうお子さんにもその血は脈々と受け継がれていそうですね。やっぱり、自分の蔵の焼酎を飲むことが多いんですか?

軸屋

そうですね、ほとんど自分の蔵で造った焼酎ばかりです。もちろん外食時やイベントの際には他の蔵の焼酎も飲んで違いを学んだりはしますが、自宅で晩酌をするときは軸屋酒造の銘柄を飲むことが多いです。

特に、「紫尾の露」が好きで、よくお湯割りにして飲んでいます。

いちばんスタンダードな味なので、どれだけ飲んでも飽きないんです。体に合ってるというのもあるんだと思います。

料理もご自身でされるんですか? 普通にフルタイムで働いた後ということですよね。

軸屋

はい、自分で料理もします。なので、帰宅して「はぁ〜」っと一息つくことがないですね。帰り着いたら、すぐに家事をはじめるので。

そういう意味では、晩酌をしている瞬間が暮らしのなかで唯一心から落ち着いている瞬間なのかもしれませんね。

「新酒」って?

新酒(「新焼酎」とも呼ばれる)とは、夏から秋にかけて収穫された新鮮な原料(さつまいも)で造られ、その年に初めて出荷される焼酎のこと。

新酒ならではの独特の香りがあり、「芋くさい焼酎」が好きな人にとってはたまらない味わいです。なかには蒸留後3日以内に瓶詰めする銘柄もあるのだとか!

蔵の情報

【会社名】 軸屋酒造株式会社
【住所】 895-1807 鹿児島県薩摩郡さつま町平川1427番地
【創業】 1954年
【主要銘柄】 本格焼酎「紫尾の露」「ぼっけもん」「ひっとべ薩摩藩」「ちくりん」
【Webサイト】 http://www.shirakane.jp

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