Vol. 01

まるにし 夏の夜(丸西酒造)

焼酎づくりは「遊び」。その探究心が、焼酎のアイデアを生む。

今回は、鹿児島県志布志市有明町にある丸西酒造から「夏の夜」という夏季限定の芋焼酎をお届けします。

「夏の夜」を楽しんでもらいたいシチュエーションや、杜氏としてどんどん奇抜で一風変わった焼酎を造り続ける杜氏の田村崇さんにお話を伺いました。

「まるにし 夏の夜」はどんな風に飲んでもらいたい焼酎ですか?

田村

この焼酎は、昼間に仕事で汗だくになって帰宅し、風呂に入った後に晩酌で「クイッ」とロックでスッキリ飲んでもらいたいですね。

そういうシチュエーションで飲んでもらうことを目指して作った焼酎です。

ペアリングは、この焼酎自体がスッキリとした味わいなので、むしろ逆にガツンとくるいわゆる”スタミナ系”の料理が意外に合うんじゃないかと思います。

こってりした味わいを、キリッとした「夏の夜」でリセットするかのような。

そのほかにはどんな特徴がありますか?

田村

夏っぽいキレを出しつつ、丸西酒造らしい「甘み」を風味に乗せるために紫芋をブレンドしています。

また、無濾過(※)で熟成しているのもポイントです。濾過をしないことで雑味を残し、素材の味そのままで楽しんでいただけます。

その状態に紫芋の甘みを加えて調整して作っているので、まろやかな雑味を味わうことができます。

「雑味」は「雑」と言うくらいなので、ないほうがいいんじゃないですか?

田村

雑味のない、いわゆる「キレイ」な味わいの焼酎はさまざまな酒造メーカーが造っていらっしゃいます。

だから、僕らみたいな小さな蔵がそれに追随して似たような味わいの焼酎を造ってもしょうがないんですよね。

なので、僕らは素材の味をそのまま残すことで生まれる「個性」を大事にしたいと思っています。

過去に自らが企画した焼酎を並べて見せてくれた田村さん。派手なラベルの焼酎が多い。

当初、焼酎づくりなんてやる気は一切なかった。

そもそも田村さんが焼酎業界に入ったきっかけを教えてください。

田村

特に定職に就いていない22歳の頃、たまたま求人票で「たまごの配送」の求人を見つけて興味があったので直接電話してみたんですね。

はい。たまごの配送、今とぜんぜん違いますね。

田村

はい。電話をすると担当者から「面接に来てくれ」と言われて。実際に面接を受けたのですが、よく話を聞いてみるとその職場では「たまごの配送なんてやっていない」、というのです。

えっ? どういうことですか?

田村

後から気づいたのですが、実は求人票の情報を1行間違って見ていて、たまごの配送業者ではない行の別の会社に電話をかけていたんです。(笑)

ええ!(笑) 漫画みたいな話ですね。

田村

その会社が、丸西酒造のグループ会社である株式会社吉山というお酒の卸会社で。

実際に思っていた会社とは違ったのですが、でもまあ、当時は「土日休みだし、まあ別にいいか」と軽い気持ちで就職することにしました。

当時は今と状況が違い、グループ全体で焼酎を一切造っていませんでした。

そこからしばらく経った後に「焼酎づくりを復活しよう」ということになり、僕も焼酎工場に派遣されることになったんです。それが焼酎づくりをはじめた最初のきっかけですね。

立ち上げ当初、僕には焼酎づくりに関する知識が全くなかったので、そのとき宮崎県から雇われて来ていた杜氏に、焼酎づくりに関する疑問をたくさんぶつけて知識を吸収していきました。

とにかく僕がしつこく質問をするので、『お前はしつこいなあ』と言われたこともありました。(笑)

蔵の壁面の一部は、田村さんが自ら板を焼いてデザインしたのだそう。田村さんらしいDIY精神だ。

その探究心の深さは、まさしく職人という感じがしますね。

田村

焼酎づくりなんて「遊び」だからね。「仕事」だと思ってやってたら、長くは続いていなかったと思います。

22歳まではちょっとでも仕事が「合わないな」と思っていたら、すぐに辞めていたから。(笑)

じゃあ、焼酎づくりは「天職」みたいなものですね。丸西酒造の焼酎は多くの焼酎とは一線を画した独特のデザイン、味わいのものが多いように思います。

田村

そもそも僕は焼酎づくりを「仕事」ではなく、ほとんど「遊び」のつもりでやっていて、焼酎業界に飛び込んだときからずっと探究心持って焼酎づくりに挑んでいます。

その「攻め」の姿勢が、未だ誰も造ったことがない焼酎を造りたいと思う理由のひとつかもしれません。

また、僕は造り手という立場ですが営業担当と一緒になって全国各地の焼酎関連のイベントにも参加したりもしています。

それも焼酎づくりが「真剣な遊び」だからできていることだと思っています。

 

工場のすぐ裏にある丸西酒造が持つ芋畑。一部の銘柄には、ここで採れた芋が使われるのだそう。

焼酎を造りつつ、自ら営業活動のために全国を飛び回るなんて、とても大変そうです。

田村

やはり、僕は造り手なので自分が造った焼酎を飲んだお客様の反応にはすごく興味がありますね。

また、お客様のグラスに注いだ、ボトルもラベルもない単なる「液体」の状態で飲んでいただいたときの感想が真の評価だと思っています。

杜氏としてはその裸の状態の焼酎に勝負をかけているので、それを飲んだ時の反応を見れるのは嬉しいんです。

先日なんか、四国まで車で2,000km以上の道のりを走って営業に回りました。(笑)

鹿児島から四国まで!?笑 めちゃくちゃ大変じゃないですか…。どうしてそこまでできるんですか?

田村

いままで、消費者に直接思いを届けるということをしていなかったんです。

うちのグループ会社に卸会社があり、丸西酒造が造ってそこで売るという役割があったんですが、やはり造り手と売り手が違う以上、造っている人の思いはなかなか伝わらないんですね。

なるほど。やっぱり、売り手と造り手との間には、語れることに限界があるんですね。

田村

「思い」なんてそう簡単には伝えられないと思っているし、伝わっていても意味が捻じ曲げられていたり。

そうなるくらいなら、造り手である蔵が先陣を切って動いて、商品のコンセプトから、その焼酎に込めた思いを伝えるのがいいんじゃないかと。

それでもし受入れられないなら、それは仕方がない。僕らは数をたくさん売って勝負をする蔵ではなく、少数でも好きでいてくれる人に丸西ならではの味わいを提供したいと思っているので。

それが当たり前の「あるべき姿」だと思って、僕はとにかくそのつながりを楽しむようにしています。

 

無濾過・・・通常、蒸留後の焼酎は油分を取り除くためにフィルタをかけて濾過されるが、そのフィルタに通さずに瓶詰めすること。適度に油分を残すことで、焼酎本来の豊かな風味が残るのが特徴。

蔵の情報

【会社名】 丸西酒造合資会社
【住所】 〒899-7503 鹿児島県志布志市有明町蓬原1397-1
【創業】 1916年
【主要銘柄】 「むかしむかし」「焔の如く」「蓬原(ふつはら)」「小さな小さな蔵で一所懸命に造った焼酎です」
【Webサイト】 http://www.marunishi-shuzo.com/index.html

 

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